玉川上水ポタリング

今回走るのは玉川上水沿いの道です。

以前、多摩湖自転車道を走った際、最寄り駅の武蔵境からその方向へ向かう途中の事です。土地勘のない私はこの川沿いの道を「おお、ここが多摩湖自転車道に違いない。」と、勝手に思い込んで暫く走りました。「緑の色濃く、なんて静かで走りやすい道なんだ!」と感激して暫く走った覚えががあります。

そりゃ走りやすいに決まってますよね。自転車道じゃないから人も自転車もほとんどいないし(走りたい人はすぐ近くにある多摩湖自転車道へいくからね)。また、大都市部の住宅街では車もあまり通らないし。

さすがに途中で気づいて引き返しましたが、走りに関してだけみれば印象のよかったこの道を、新緑の季節(2011年のこどもの日です)に走ってみようと思いました。

玉川上水に関しては、なんとなく江戸時代に大都会江戸への水を引くために作られたくらいのあいまいな記憶しかありません。手元の地図(印刷物)で確認したところ、羽村市の多摩川沿い(羽村取水堰)から、福生、立川、武蔵野などを経て三鷹の辺りで終わってました(あくまでも自分の手持ちの地図の話です)。そこで羽村駅まで電車輪行し、川沿いの道を探しながら三鷹へ川下りを行う事にしました。

本日のコース

羽村取水堰

都会を流れる清流

取水堰の最寄り駅は青梅線の羽村駅です。昔は青梅線の沿線って都心からみても遠いイメージがありましたが、今は中央線特快を利用すれば東京駅からでも1時間ちょっと。輪行にはお手頃な場所ですね。

羽村駅で自転車を組み立て、羽村取水堰へ出発。自転車にとってはあっと言う間の距離でした。ですが、なんとなく車が行く方向を追いかけて着いた場所が「羽村市水上公園」なる場所でした。

そこで多摩川を眺めてみてびっくり。

眼下には清流が流れ、川鵜の群れが泳ぎ、ふと見やると多摩川の先には小高い山々が広がっていました。東京から1時間余りの場所に広がっていたのは、まるで山深い渓流のような光景と静けさでした。

多摩川と川鵜の群れ

ここで案内板を見つけて羽村堰の場所を確認。まずはそちらに向かいます。

大勢の自転車が

四阿(あずまや)を見つけて、さっそく休憩です。けして軽くはないクロスバイクを担いで駅の階段昇り降りやらは結構辛かったから。

四阿で休憩する人々

そこには大勢の自転車乗り(特にロード)がいました。そういえば確かここは多摩川サイクリングロードの起点・終点だったっけ。頭の中が玉川上水でいっぱいだったから忘れていたけれども。

四阿で暫く景色を堪能した後、自分と同年代のワンちゃん連れの壮年のカップルがいましたので挨拶。ワンちゃん連れ=ジモッティの方のお散歩だと思ったので、お話を聞きたくなったのです。

聞けば、歩きではなく車でここまで来ているがちょっと頑張れば歩けるくらいの近所に住んでおり、ここへはしょっちゅう来ているとの事。黒い鳥が川鵜だという事もご存知でした。また、向かい側の山はちょっとしたハイキングコースになっており、休日には大勢の人が訪れるとの事。なんて羨ましい・・・

そういえば電車の中でナップザックを背負った人も大勢みかけました。なんで高尾山方面じゃなくてこっち(青梅方面)なのか不思議だったのですが、そういう事だったんですね。

そんな話を伺った後、改めて多摩川の景色をみていると・・・自転車で走る事なんてどうでもよくなって来ました。今日一日、ここでぼ〜っとしてようかなぁ、なんて思った程です。

羽村堰

とは言っても明日(5/6)はお仕事。いつまでも現実逃避しているわけにもいかず、まずは情報収集のために辺りをウロウロしてみました。

玉川兄弟の像

玉川兄弟の像がありました。玉川って苗字だったんだすね。知らなかった〜。

玉川兄弟の像

取水堰

そして取水堰を発見。

多摩川と取水堰(右)

 取水堰

玉川上水の始まりの地点

そこそこの深さがあるにも関わらず、底まで透けて見える程の綺麗な水でした。そりゃぁ、源流の多摩川が清流だからね。分かってはいるんだけれども、ここが東京駅からそんなにも離れていない場所だけに、驚くやら感激するやらで。

羽村堰と玉川上水

案内板を発見。

羽村堰と玉川上水の案内板

以下、案内板に書かれていた玉川上水の説明文です。

玉川上水は、羽村取水堰から新宿区の四谷大木戸に至る延長約43Kmの上水路で、1654(承応3年)当時、江戸の飲料水供給のために造られたものです(現在は、羽村取水堰から小平監視所までの間12Kmが、上水路として利用されています。)。

ん?という事は・・・・

といった情報やら疑問やらを抱えつつ、出発進行〜♪

スタート地点

スタート地点では幅の広い舗装路。

玉川上水沿道始まりの地点

これはもしかして、川沿いの道にありがちなサイクリングロードが広がっているのでは?なんて、勝手な希望を胸に川沿い下りの旅の始まりです。しかしその希望はすぐに打ち破られてしまいました。舗装はすぐに途切れ、路面はダート。「世の中、そんなには甘くはないかぁ」。

ん?でも、しかし。東京でダートの道があるというのは、それはそれで新鮮な驚きです。

そう思いながら走っていると、ダートは舗装路に変わりました。改めて玉川上水を見ると、相変わらずの清らかな流れ。しか〜し!このフェンス、なんとかならないのかなぁ?せっかくの清流と木々の緑があるのに、景観も気分も台なしです・・・・

多摩川上水の清流とフェンス

まぁ、でも。冷静になって考えてみれば分からなくもないですけどね。何しろこの川は上水(飲み水)。それなのに、もしフェンスがなかったとしたら・・・・

そういうヤツ絶対にいるよな〜、と、思いつつ、それなりに納得です。・・・・・・・ええ、勿論私の事です<迷惑千万な行為をやりかねない人

それにしても玉川上水の静けさよ。ただただ、清流の水の音と鳥の鳴き声だけが聞こえる世界です。大勢いた自転車乗りは皆、多摩川サイクリングロードが目的のようで。玉川上水を追いかけているのは私一人でした。

いや〜な予感

暫く走ると一般道に合流しました。なんだか、とってもいや〜な予感・・・その嫌な予感はすぐに的中するのですが、暫くは一般道を走ります。

一般道に合流

その道路は都道29号線「奥多摩街道」という名前でした。

休日のこの辺りは車も少なく、快適に進んで行きます。が、やはりと言いますか。玉川上水は通りとはどんどん離れていったのです。

玉川上水を求めて

以降は玉川上水を求めて走り、いつの間にか川の側を走れなくなり、また川を求めて探しまくるの繰り返しになりました。

そんな中、青梅橋の付近では蛍が生息しているらしい事を知りびっくり。

青梅橋付近

蛍の赤ちゃんが眠っているらしい

ここって住宅街なんですけれど。そんな所で蛍が生息しているとは。東京って奥が深いなぁ〜。因みに私は生まれてこのかた、ただの一度も蛍を見た事がありません・・・

とうとう見失っちゃった

どうにかこうにか玉川上水を見つけながら走っていたけれど、やがてすっかり見失ってしまいました。

この辺りは初めて訪れた場所ですから土地勘は全くなし。GPSもないし、根拠もなしに探しまわっても無駄に時間が過ぎていくだけ。

そこで作戦を変更する事に。これまでは川沿いを走る事を第一義としてきましたが、ここからは街道や駅を目印にしてそこから玉川上水を探す事にしました。

改めて地図を眺めてみると、玉川上水は拝島駅の北部以降、西武拝島線の南部とほぼ並行に流れています。では、まずは拝島駅を目指そうと。

と、その前に。自分の現在位置が分からなければ拝島駅の方向も分かりません。そこでまずはコンビニを探し、どうにか見つけました。ここでお買い物をして、レシートを貰います。

コンビニのレシートには店名と住所が印字されているので、携帯電話の地図ソフトに住所を打ち込んで現在位置を確認。その上で手元の地図と照らし合わせながら拝島駅方向へ進みます。(この手は道にまよった時に使えますので、覚えておいて損はないですよ)

拝島駅〜玉川上水駅

自分が居たのは福生市の熊川という場所でした。そこから拝島駅の南側へ行き、青梅線の南側から北上して線路を横断。どうにか玉川上水と再開できました。

昭島市内で玉川上水に合流

以降は川沿いの道をひた走ります。休日の住宅街の道は車も少なく、快適なサイクリングを続けます。

川沿いの道(昭島市内)

同(立川市内)

相変わらずの清流と樹々の緑

すずかけ橋と「ふせこし」

不思議な光景を発見して思わず自転車を降りました。玉川上水はこつ然とその姿を消し、その少し先でまた姿を現しているのです。

玉川上水は「右から左へ」流れています。でも別の川が交差?

姿を消す直前

突然姿を表した玉川上水

これは一体全体?近くに案内板があったのでその説明を読む事に。

ふせこし(サイホン工法)の説明図

要約すると概ね次の内容でした。

なるほど、言わば川の立体交差というワケですね。それにしてもこんなものは生まれて初めて見ました。かなりの感激です。

走りを再開して走ること暫し。急に視界が開けました。

玉川上水駅と玉川上水緑道

上を見やるとモノレール。平地には西武線の車両が。調べるとここは「玉川上水駅」という場所でした。なんとまぁ、今回のテーマそのものの名前を持った駅ではないですか。

玉川上水駅のモノレールと西武線

水分補給とトイレ休憩して、再び出発です。するとあたり一面はより一層緑濃い場所になりました。玉川上水緑道というのだそうです。

玉川上水緑道

道はダートとは言えよく踏み固められており、快適な走行を邪魔するものではありません。ママチャリの他、フォールディングバイクの姿やお散歩している人もたくさんいました。玉川上水もこの辺りでは少し深いところを流れているらしく川面を確認する事はできませんが、代わりに野鳥の声も聞こえます。中にはバードウォッチングしている人もいました。これぞまさに都会の中のオアシスというのでしょうね。

暫くはこの静かな道をひた走ります。すると何かの案内板を見つけました。

 清流の復活

ここで、この旅の最初に感じた疑問の答えを知る事になります。以下に疑問を再掲します。

先の案内板「清流の復活」には次のような内容が書かれていました(要約)。

なるほど!そうだったのか!だからこそ、単なる上水としては無用の存在でしかない玉川上水が、小平監視所より下流も流れているのですね。やっぱり都民の意識は凄いし、そういった意識や理想を実現できている東京都は奥深いなぁ。

小平中央公園

元々が緑濃い玉川上水沿いの道ですが、より一層緑濃い場所を発見。小平中央公園という場所でした。

小平中央公園

暫く走り詰めだったので、トイレ&休憩。少し手前で踏切を渡りましので地図を確認すると、その路線は西武立川線であり、すぐ近くに鷹の台駅があると分かりました。そこでちょっとだけ戻ってお昼ご飯を採る事に。

仕事が忙しすぎたせいか、かなり疲れが溜まっていたみたいです。体が自然に欲していたのは、肉(アミノ酸)と炭水化物(エネルギー)。私としてはとても珍しい事なのですが、迷わずハンバーガーショップに入り、お肉たっぷりのハンバーガーセットメニューを注文し、それでも足りなかったので追加でハンバーガーと鳥の唐揚げっぽいものを食べました。

喜平橋〜境浄水場

十二分に(というか、食べ過ぎ>_<)お腹も満たされたので出発。これまでなんとなく右岸を走って来ましたが、やがて、なんだかやたらと車の多い一般道に合流しました。

調べてみると都道7号線、通称五日市街道というところでした。この道、交通量は多いし道幅は狭いし(あくまでも茨城県南の一般道との比較)。

そもそもがポタラー(私の造語。安全が十分に確保できる通りで、辺りをキョロキョロ眺めながら走るの意味)の私にとって、安全確認やら、車の流れにあわせるように走行して、信号停止で停まって・渋滞している車列をその左から抜いていくような道は、なんら価値を感じません。特に今回は自転車担いで遠い東京まで来ていますからね。

途中(地図で確認すると喜平橋。都道133号線との交差点)から、右岸を走る事にしました(この橋から都心方面へ向けて、五日市街道は左岸を走る形になっていました)。

ここから先(武蔵野市方面)の走りは快適でした。ここからは一通の道が多くなるのですが、自転車は規制の対象外。時には車と同じ方向に、またある時には車と反対方向に進まなければならないという、ちょっと変わった道になってしまいましたが。

しかし、都会の住宅街ではそもそも車が少なく(茨城とは真逆ですね)、とても走りやすい道でした。交差点やら信号が多いため、茨城の田舎道のようには行きませんけどね。

以降、国分寺〜小金井市間を、これまでとは比較にならない程の時間で走ります。

そして、今回の旅で初めて汗をかく程の距離・速度で走っていると、やがてどこかで見たような光景に思わず自転車を止めました。

 見覚えのある交差点

んん〜?この場所は確かに以前見た事がある。どこだったっけ?・・・・!

ようやく思い出しました。冒頭で述べたように、玉川上水沿いの道を多摩湖自転車道だと思い込み、やがて間違いだと気づいて帰って来た時に見たのです。

そう、ここは武蔵野市。少し進めば境浄水場のハズです。そこへ向けて、玉川上水の写真を撮りつつゆっくりと進みました。

 武蔵境近辺の玉川上水

程なく、境浄水場へとたどり着きました。

 境浄水場

旅の終わりに

ここから先、玉川上水沿いの道にこだわって三鷹方面に進むとなると、こんな(↓)一般道一通を逆行して進まなければなりません。

武蔵境→三鷹方面の道路

自転車は一通の対象外ですから、法律上は車と逆行して進む事はできます。でも、この路面の幅。一台のママチャリが逆行していましたが(法律上、なんら問題はないです)、私にはとてもそんな事をする気持ちはありませんでした。

これまで見てきたのと同様に、此処から先(下流)も玉川上水はきっと綺麗な事でしょう。例えそれが上水としては使われていないにしても。

羽村堰からここ(武蔵境駅近辺)まで、玉川上水はいつも綺麗であり、その沿道に樹々の緑を蓄えてきました。何故、大都会東京でそんな事が可能だったのかは、これまでにお伝えしてきた通りです。仮に道にちょっとだけ迷い、玉川上水を一瞬だけ見失ったとしても、それを探すのはとても簡単な事でしょう。なぜならばその側には常に樹々の緑が生い茂っているからです。

もうここで十分。そう思った私は武蔵境駅へ向かい、自転車をたたんで帰路につきました。

大都会東京に暮らす人々への尊敬・畏敬の念

例えばの話ですが、都心の空はいつでもおぼろ月夜。なぜならば、空気が汚いからです。

でも、そういう場所だからこそ、自然が如何に大切かを常に考え、世界有数の超巨大都市であるにも関わらず、たくさんの緑を残し、清流を復活・維持してこれたのでしょう。

北海道の炭鉱の街に生まれ育ち、以降、千葉県や茨城県など自然が豊かと言われてる地域にしか住んだ事のない私ですが、そんな私が敢えて私が申し上げます。

東京は本当に綺麗な水とそれに伴う自然に恵めまれた素晴らしいところだと。そこには地方の都市では忘れ去られてしまった様々なものが、ごく当たり前のように存在します。

今回ご紹介したコースは、サイクリングをたしなむあらゆる方々にお勧めのコースだったか?と問われれば、即座にノーと答えます。ダートあり(ロード車走れない)、一般都道(の車道)あり、一般道の逆行ありですから、誰にでもお勧めというワケには行きません。

でも、サイクリングなどは抜きにして。是非、羽村堰付近の大自然を堪能いただければと思います。羽村駅から歩いてもそんなに時間がかかる距離ではありません。また、沿道にお住まいの方は、ママチャリやら徒歩にても見学いただければと思います。


庶民チャリダー

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