筑波山北部山地縦走

以前、サイクリングロードの休憩所で雑談したロード乗りの方の一言がず〜っと気になっていました。それは、「加波山に行ってきました」。

手持ちの地図を確認しても、麓から直接加波山へ登る道が見当たらないのです。これがMTB乗りの方のお言葉だったら、「道なき道を走ったのかな〜?」なんて納得できるのですが、実際はそれとは正反対のデリケートなロード車。

いろいろ探ってはみましたが、やはり以前西光院に行った時に通った上曽峠から、きのこ山を初めとして、複数の山々を越えていかないと行けないみたいです。では行ってみよう。

今回のコースは、りんりんロードの真壁休憩所から、県道7号を登って上曽峠へと行く事にしました。西光院からの帰りに下った時、「ここを登るのはきついだろうなぁ」と思ったのと、西光院へ行った時のルートを経由したのではつまらない、との理由からです。

梅雨末期のジメジメととした空気の中、いざ!出発です。

ルートはこちら

真壁休憩所〜県道7号〜上曽峠

真壁休憩所までは勿論りんりんロードで。ここから県道7号を上り始めます。

今日走るところ(一部)

まずは、この山へ

やはり想像していた通り辛かった。でも辛かった理由は坂の傾斜云々というよりは、むしろ暑さと汗でした。気温はそこそこながら湿度が高く、しかも、風がほとんどありません。これでは汗が蒸発した時の気化熱で体温を下げる事ができないのです。薄曇りとは言え、日の光を遮るものがない中、上りオンリーの坂はキツすぎました。

「せめて多少なりとも風が吹けばなぁ・・・」なんて泣き言を言いながら、所々で体温を下げる&額から垂れた汗が目に入らないようにタオルで拭いながら休憩する事2回。ようやく木陰の続く箇所を見つけてしばしの休憩です。

体温は徐々に下がって来ましたが、大量の汗は全く乾く事もなく。「風よ吹け!こうなったら向かい風でもなんでも来い!」なんて願いつつも、今日の気候ではそんなものは望むべくもなく。。。車が通り過ぎる時の風を有り難く頂戴して、少しでも体温が下がるのを待ちました。

それにしても、自転車乗りって勝手な生き物だなぁと反省(って言うか、俺だけ?)。風の強い冬の間は「風さえなければもっと楽に走れるのに・・・」なんて不満を募らせながら走っていたくせに、今日みたいな日には「風よ吹け〜!」なんてお祈りするんですから。わはは。

思えば唐突にママチャリで激坂を登ろうとしたのは去年のちょうど今頃だったなぁ。いろんな意味で無茶過ぎたと自覚はしているけど、今になって省みれば「梅雨明け前の気象条件、即ち、気温の高さと、湿度の高さと、そして何よりも風が無いという事の重大さを分かっていなかったことが、きっと一番の敗因だったんだなぁ」という事に、1年の歳月をかけてようやく分かるようになりました。でへへ〜。

さて、体温も下がってきて少し冷静になった私は、作戦の練り直しをする事にしました。こんなペースで走っていたのでは水が持たない恐れが十二分にあります(って言うか、1億パーセントくらいそうなりそう・・・)。麓のコンビニで水分を補給し、1.5リットルの水を持って上り始めましたが、今日のコースはこれまでに一度も走った事がないため水分量の目安もたたない。更に途中にコンビニどころか人家もありません。アップダウンが続くはずなので、水が切れたら回れ右して坂を下ってくればよい、というわけにもいかないのです。

止むを得ずというよりは、積極的な戦略として、庶民チャリダー奥義「インナー1速」で登る事にしました。それも、これまでにもない位の低速で。

人間、やる気があればできるものですね。これまでの上り坂での最低速度「時速6キロ」を1キロも更新して、時速5キロで走り続ける事に成功ですv(^o^)。うむ、これだと体温も上がらないし、汗もあまりかかない。以降は一度も自転車を停める事なく、どうにか上曽峠へと辿り着きました。

上曽峠

キノコ山・足尾山への分岐点。写真中央奥がキノコ山への道

上曽峠でふと上空を見やると、たくさんのオニヤンマが飛んでいました。子供の頃はその姿を見つけるのも大変で、見かけただけでも大喜びしたものです。オニヤンマを捕獲したとなれば、そりゃぁもう、子供たちの中ではヒーローでしたね。でも、筑波山ではそのオニヤンマが当たり前のように飛んでいます。いやぁ、本当に自然が豊かなんだなぁ。(次は虫取り網を持ってこようかな?)

キノコ山〜足尾山〜一本杉峠

上曽峠からは写真でもお分かりの通り、木立の中を走る林道です。標高もそこそこある上に、山の木々が紫外線を遮断してくれるお蔭で、ここからは楽しい山登りになりそうです。いざ、出発。

へろへろと山を上っていると、途中で看板を発見。この道は「林道北筑波稜線」だと分かりました。

山火事注意の看板

写真を撮っていると、ジョギングしながら山上りをしている方が通り過ぎていきました。お互いに「こんにちは〜」と挨拶しつつ、しかし私は驚いてしまいました。まさに「目が点」状態。山岳ジョギングする人はこれまでにも何人かは見かけていましたが、しかしこのお方はどうみても60代の後半以上。しかもこの暑さ。凄すぎです〜。

自分もあんな風に元気に歳を取れたらいいなぁなんて思いつつ、{体力あるのはわかるけど、こんな気候なんだから無理しないでね〜}と心の中で応援していました。

ヒルクライムジョギングに勇気づけられながら、改めて出発。高度が上がるに連れて気温も下がり、麓の県道7号よりも傾斜は急ながら、随分と走りやすくなりました。でも、「今日は水分量の目安が分からないし補給もできない。水が切れたらそれは死を意味するぞ(って大袈裟)」と肝に銘じながら、ゆっくりゆっくりと登っていきます。

それにしても不思議な事が。何もないはずの林道なのに、かなりの車が行き来しています。それも大型のワンボックスカーが多いんです。なんでかな〜?

そんな風に呑気に上る事しばし。やがてお腹がぐぅぐぅ状態になってきました。麓のコンビニでおにぎり一個補給したし、今日は最低速度をマークする程超スローペースで上って来たんだけど、もうお腹が減るの〜???しょうがないので自転車を立てかけられる標識を見つけて、麓のコンビニで買ったパンで食事補給です。と、ロード乗りの集団が上って来ました。

私は上っている人、特にロードの方には気の毒だと思っているので声をかけないようにしているんですが、しかし、彼らの方から「こんにちは〜」と挨拶してくれました。勿論私も「こんにちは〜」。うぉ〜、元気だな〜。

こんな感じで上り続ける事しばし。急に視界が開けてきました。そちらを見やると、関東平野(桜川市方面)が眼下に広がっていました。そして、パラグライダーの発射場も。

パラグライダーの発射場(キノコ山)

パラグライダーの優雅な舞いを眺めつつ、しばしの休憩。

更に自転車を走らせると、今度は左右に視界が広がってきました。そして見慣れない不思議な形の物が並んでいました。最初はテントかなぁ?と思っていたのですが、どうやらハンググライダーのようでした。間近で見たのは初めてだったので、それが何であるかを理解するのに暫く時間がかかりました。皆さんまだ準備中のようで、華麗に舞う姿を拝む事はできません。残念。

ハンググライダー

ここは左右に視界が広がっていました。桜川市側と石岡市側の両方の景色を楽しむ事ができます。これまでの経験から標高は500メートル位かな?と思うと同時に、俺ってばいつの間にか景色でおおよその標高が分かるようになったんだなぁ〜、と実感。

桜川市側の風景

石岡市側の風景

勝手な想像ですが、風の向きによってどちらの方向へ発射するのかを決めているのでしょうね。

ここでようやく、林道にも係らず車の数が多かった理由が分かりました。パラグライダーやらハンググライダーを楽しむ方々の車だったのですね。特にハンググライダーは、大型のワンボックスカーじゃないと運搬できないんだと理解しました。

やがて傾斜は緩やかになり、上りオンリーだったのが多少ですが下りに。どうやら林道で「きのこ山」の一番高いところに到達したようです。そして、ようやく待望の下り&風です。暫く全身に風を感じながら下っていると、程なく道は上りへと変化してきました。

これまでの自分だったら、「せっかく上ったのに、下って、そしてまた上るなんて・・・・」と少しだけ憂鬱になったものですが、もうさすがにそんな愚痴を言う気はありません。下りがあれば上りがあり、上りがあればこそ楽しい下りがある。それがヒルクライムというもの。そんな楽しい上り下り。標高もこれまでの経験から500メートルくらいはありそう。涼しいな〜、楽しいな〜♪

などと自転車を走らせていると、何やら看板が。確認すると足尾山でした。ということは、足尾山の頂上に一番近いところまで上ってきたわけだね。

ここからはかなり長いこと下りが続きます。これまでだったらかなりのスピード(自分にとっては)で下るんだけど、でも、今日は別。できるだけゆっくりと下る事にしました。下りでは時速20キロでも60キロでも、涼しい事に変わりはない。であれば、少しでも長く涼んでいたいと思ったからね。それに初めての道だから、あちこちをキョロキョロ眺めていたかったし。

そうこうしているうちに一本杉峠に到着しました。

一本杉峠〜丸山

数人のロード乗りと、MTB乗りの集団が地面に座り込んで休憩していました。何という事はなしにMTBの車体を見ると皆泥だらけ。ふと、進行方向に対して横切っている道を見ると、左右の道ともに未舗装路でした。りんりんロードでは、ヘルメットも被らずグローブも装着せず、妙に綺麗なMTBで走っている人を大勢みかけますが。しかし、ここにいるMTB乗りさんは皆ヘルメットにレーパン・サイクルジャージ。どうやら皆さんオフロードの山道を走る本格派の方々のようです。

念のため標識で自分の進むべき方向を確認。ここから先は間違いなく「激坂」の部類に入るよなぁ・・・さすがに躊躇しましたが、でも、まぁ、なんとかなるでしょ。

丸山への道(中央)。左右の道はダート

今日の一番の心配事は、体温の上げ過ぎと水切れ。激坂だったこともあって、できるだけ低速度で進みました。ふと、「自転車って上り坂ではどの程度まで遅く走れるんだろう?」と、思って試してみました。一瞬だけですが、時速3.8キロをマークしました。ゆるい坂だったらもっと遅く走れるかな?機会があったら挑戦してみよう。

ゆっくりと上り続ける事しばし。またまたお腹が空いてきました。自転車を立てかけられる場所を見つけて、本日2回目の補給食です。今度はアミノ系の補給食です。経験上、スポーツの最中ではパンなどの炭水化物系だけだと足りないと感じていましたので。理由は分からないけど、スポーツをやる場合はアミノ系を組み合わせるのが効果的みたいですね。

クロスバイクの利点

と、先程一本杉峠で休んでいたロードの集団が上ってきます。よく見れば、きのこ山の補給中に私を追い越していた集団でした。

でも、きのこ山の時とは明らかに様相が違います。一言で表現するならば「ヨレヨレ」。苦しそうな表情で歯を食いしばり、自転車がふらついています。中には蛇行しながらダンシングしている人も。今度ばかりは声をかけないどころか無視してあげようと、目線をそらしていると・・・「ハァハァ・・・こんにち・は〜」と彼らの方から挨拶してくるではありませんか。

なんて素晴らしい若者たち。こんなにも苦しそうなのに、自分の方から声をかけるなんて!

ヒルクライムしているとたくさんのロードと出会いますが、ものすごく極端に分類しますと、2つの種類に分けられると思っています。森や麓の景色や鳥のさえずりを楽しんだり、時には走りながら水分補給をしつつ、のんびりとクロスバイクで走っている私。そんな私をダンシング(立ち漕ぎ)であっと言う間に追い抜いていく種類の人達と、死にそうな表情で辛そうな声を上げながらフラフラになって上って行く人達です。後者には地面にへたり込んでいる人もいます。

前者はおそらく競技などにも参加しているスポーツ派。後者は趣味や楽しみの範囲内でヒルクライムを行っている人達なんだろうな。

ロード乗りの名誉のために申し上げますが、趣味や楽しみの延長で乗る方にとって、ロード車はおよそヒルクライムに適した自転車だとは思えません。平地を如何に高速に走るか?に特化した自転車なのであって、山登りが「楽」にできるようにはできていないのです。

ヒルクライムで好タイムを叩き出す人は圧倒的にロードが多いという現実はありますが、それは競技を前提とする人達がロードに乗っているという事実からであって、けして初心者やら走力のない人がヒルクライムを楽にできるような構造ではないと思っています。

一方、私の乗っているクロスバイクは次のような特徴があります。

これでは走力も心肺能力もない初心者だって、特に苦しむ事もなくヒルクライムが楽にできるのは当たり前。ヒルクライムに関してだけ言えば、反則に近いと思える自転車です。

丸山山頂付近

激坂を上っていくと、やがて傾斜が緩やかになりました。そろそろ丸山山頂かな〜?なんてキョロキョロしていると、巨大な建造物を発見。ウインドパワーつくば風力発電所でした。晴れた日にはりんりんロードからもその姿を確認できますが、まさかこんなに大きいとは思わなかった。まさに「口をあんぐり」状態です。

巨大な風力発電所

加波山神社入り口

丸山山頂付近からは長い長い下りが続きます。まるで麓に降りてしまいそうなくらい。ここでちょっとだけ不安になりました。加波山は今回のコースでは最も高い山です。どこかで道を間違えた?

まぁ、間違えたんだったらそれはそれでよいかな〜。道幅は一般的な林道よりは広くなり、舗装の状態も林道にしてはかなり良好。快適な道をみつけたと思えば。

と思っていると、進行方向左側の道端に「加波山神社入り口」の案内板を発見。ほっ、道を間違えていたわけではなかった。

加波山神社入り口

それじゃ加波山神社まで上りますか〜、と、そちらへの道へ進んでびっくり。舗装がガタガタな上に、とんでもない急傾斜。余程の坂でもない限り「激坂」とは表現しない私でも、この道だけは迷わず、いろんな意味で激坂だと思ってしまいました。

でも、まぁ、疲れたら休めばいいや、などと呑気に自転車を走らせたんですが、少し進んだところで断念しました。その理由は・・・

路面のよい舗装路なら行けるところまで漕いで行こうとは思いますが、砂利道ではタイヤが空転してとても登れたものじゃない。

すぐに自転車を降り、回れ右をして、ブレーキをかけながら自転車を押して?(押すどころかブレーキかけ続けだったけど。まぁ、その位の激坂)下る事に。

と、車が神社の方向に向かって上ってきたのですが、あまりの激坂に諦めたのか、反転させて降りていきました。

りんりんロード岩瀬まで

加波山神社はあきらめて元の林道に。暫く下った後、また上って、そして下って。やがて道は平坦に、そしてT字路へ.。

地図と、うろ覚えの記憶を頼りに、どうにかりんりんロードの起点である岩瀬休憩所に辿りつきました。

心配していた水も、ひたすらのんびり走ったお蔭で、ボトルまるごと1本分(およそ500ミリリットル)を残しつつの到着でした。よかった〜。生きていた〜(大袈裟)♪

帰りはりんりんロードで。途中で今日走った山々が見えます。「あの山を越えてきたのだなぁ」と、ちょっと感激しました。

りんりんロードから見た筑波山北部山地


庶民チャリダー

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