日本の道百選 学園東大通り

建設省(現国土交通省)が選定した「日本の道百選」。茨城県内からは、以前このサイトで紹介した「つくば道」(茨城県つくば市)と、今回紹介する学園東大通り(ひがしおおどおり、です。とうだいどおり、ではありません)の2つが選定されています。

しかし、学園東大通りはただの市街地道路に過ぎません。少なくとも地元民にとってはここが特別な道路という認識はないようですし、私も同様です。そこで今回は、紅葉も見頃&落葉も目立つこの大通りを「自転車で」&「歩道を走り」、その魅力と独特な街づくり・風景をお伝えしたいと思います。

学園東大通りとは

学園東大通りの紹介の前に、そもそも「学園」がなんであるのかを補足します。つくば市は1985年に4つの町村が合併して「つくば市」となりました(2010年現在は元6つの町村による構成)。

その中でも研究所や大学等が集まっている市内の一部地区を特に「つくば研究学園都市」という呼び方をします。この場合の「学園」とはその地域の通称から来ています。別に「研究」という名称の学園(学校)があるわけではありません。

学園東大通りは、その「研究学園都市」の東側に位置する幹線道路の通称・俗称です(同様に、西大通り、北大通、南大通りがあります)。俗称ですので範囲は曖昧ですが、一般には茨城県道55号線のつくば市中心部(つくばバスセンター近辺)を指します。

今回のルート

国土交通省のサイトで「日本の道百選」を検索してもそれらしきページは見当たらず。学園東大通りの「どの区間」が選定されたのかは分かりませんでした。そこで今回は、つくば駅を起点とし、県道55号線中で「歩道が自転車レーンと歩行者レーンに分かれている」範囲を走る道をご紹介します。

つくば駅から東大通りはすぐの距離ですが、せっかくなので東大通りのスタート地点へは公園通りを経由して行く事にします。こちらも紅葉が見頃でしたので。

つくば駅を起点とする方はこちらのページをご覧ください。

学園東大通りの歩道をひた走る

国道354号線から大角豆(ささぎ)の交差点を左折(北方向へ)。そのまま道なりに走ります(県道55号線、通りの左側を北上します)。こんな感じの歩道です(↓写真)。11月中旬ですが、落ち葉も目立つくらいに紅葉が進んでいます。

 学園東大通りの歩道

写真向かって右側、つまり車道寄りが自転車レーンで、もう一方が歩行者レーンです。因みに、自転車レーンはお互いが注意すれば自転車同士すれ違いができる程の幅があります。その位、この歩道は広いんです。因みに学園東大通りの反対側も同じ広さの歩道があります。しかも写真でお分かりのように歩行者も自転車もそうそういないし。

なんて贅沢なんだろうなぁ、と思うと同時に、都会は人や自転車が多いのに道幅は狭く、逆に田舎はそれらが少ないのに十二分な広さがある。世の中ってうまくいかないなぁ、っていつも思います。

それにしても、これだけ広くて街路樹が延々と続く道って、一体全体日本国内にどのくらいあるのでしょうね?

産総研とJAXA

歩道の木々を眺めながら北上して走っていると、やがて「地質標本館」の石碑が見えてきます。産業技術総合研究所(中央)の中にある地質標本館で、一般の方も見学ができます(土日も開館しています)。地学好きな方にはヨダレがでそうな展示がたくさんありますので、興味のある方は是非立ち寄ってください。

産総研入り口

歩道を北に向かってひた走ると、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の正門が見えてきます。

JAXA入り口

写真中央に見えるロケットですが、模型とかオブジェとかではなく本物のロケットだそうです(知らなかった)。こちらも見学可能です。多少なりとも宇宙に興味のある人だったら訪れてみる価値十分あり。

自己の安全第一で

そのまま北上するとやがて南大通りとの交差点に到達します。東西南北通りで囲まれたこれらの区間はいずれも片側三車線になります。

南大通りとの合流地点

こういった交差点では車道を走る車にとっても、歩道の歩行者・自転車にとっても、お互いに十二分な注意が必要になります。なぜならば、車道の左折専用レーンにも歩道側にも、信号もなければ一時停止の義務もないからです。

左折専用レーン(写真右側)

「何事につけ車が最優先」と勘違いしている悪質なドライバーも少なからずいますので、歩行者・自転車は十分注意してください。

計画都市ならではの特徴

さてさて、東大通りを走っていると、この通りのひとつの特徴がよく分かる場所があります。それは、車道から店舗・建物へ直接出入りができない、という事です。

例えば次の写真。なにやらお店がありますが、東大通り(の車道。写真右側)に出入りできるものが全くありません。ではどうやってこのお店に入るのか?

 車道との行き来ができない建物

東大通りの車道のもっと外寄り(もっと左側)の道路へ手前の信号から左折&右折して、店舗などの裏側の通りから出入りするのです。そんな理由から、車道の側には一切入り口がない店舗もあります。客は歩道から歩いて出入りする人じゃなく、裏側へ「車」で来るものという、つくばならではの常識があるみたいですね。

では、なんのために?こうすることによってお店に入りたい車が減速・一時停止する事や、東大通りに合流したい車が無理やり左折合流する事により、車の流れを滞らせる事を防いでいるのです。

「研究学園都市」地区は、国策によって開拓された場所です。しかし、都心とを結ぶ鉄道はありませんでした。そのため、車がいかに通行しやすくするか?を前提に作られています。省エネ・エコが大前提の今となっては時代錯誤も甚だしい感がありますが、しかし当時(昭和40年代後半)は、来るべき「車社会」を前提とした先進的な都市創りだったのではと想像しています。

余談ですが、初めてつくば市の研究学園地区を走るドライバーにとってはかなり混乱の元になっているようです(自分もしかり)。通り沿いにあるお店に入りたいけど入れない。一体全体どうやってお店に入るの?&なぜ入れないお店が潰れないの?って。

こういった街づくりの効果は、実は歩行者やら自転車にとってもメリットがあります。歩道を歩いていて or 自転車で走行していて、車道に合流したい車に進行方向を防がれた事は多かれ少なかれ経験がある事かと思います。でも、つくば市の研究学園東大通り(西南北も同様)ではこういう悩みとは無縁です。歩道を歩く・自転車で走っている限り、車との遭遇の心配が一切要りませんので(勿論、交差点は別ですよ)。

ここは本当に歩道なの?

左右に樹木がある区間

東大通りの街路樹は、歩道から見て車道側(写真の右側)にのみ植えられています。でも、その反対側は建物の持ち主次第です。そのため、場所によっては左右を木々に囲まれた、こんな素敵な場所(↑)に出会える事もあります。

歩道というよりは、まるで森の中に切り開かれたサイクリングロードなのではないか?と錯覚してしまう事もあります。実際にはここから信号を2つ〜3つ程度通過すればつくば駅のすぐ側なのですが、そんな事を全く感じさせない素敵な場所がここ東大通りにはいくつかあります。

木々の赤・黄・緑がとても美しい。思わず自転車を止めて、しばし景色を堪能しました。

石碑と中央通り

「学園東」の交差点を過ぎると、次の信号との間に「日本の道百選 学園東大通り」の石碑があります。

日本の道百選の石碑

とは言っても車が高速で移動する車道側(写真右)からも、歩道側(写真左側にあるんだけど、写っていないくらいに距離が離れている・・)からも気づきにくい場所にあります。意識して探さないと発見も難しいです。

かく言う私も今年になって初めてこの存在に気づきました。毎日通勤で通っているのですけどね・・・・

さてさて、次の信号は「中央通り」との交差点にあります。「左折するとつくば駅」の案内板もあります。

時間に余裕がない方はここで左折してつくば駅へ。時間や体力に余裕のある方はここで東大通りを横断してください。

 ここを左折すればつくば駅

レーンが色分けされている場所も

東大通りの駅の北側の歩道では、次の写真のように自転車レーンと歩行者レーンが文字と色で明確に区別されている場所もあります。ただの歩道なんだけど、まるでサイクリングロードみたいですよね。自転車レーンと歩行者レーンの塗装が薄くなって来ている箇所も多く、区別がつきにくいために舗装のやり直しをしているようです。

レーンごとの区分と色分け

東大通りのレーンごとの色分けは最近行われ始めました。この色ですが、市内の一部で行われている「車道の一部を自転車専用レーンにする」際の色分けと同じです。車大前提社会だったつくば市も、近年のエコブームの影響からか、自転車の事も考慮しなければいけなくなってきたのかもしれませんね。それと近年のペットブームやらウォーキングブームの影響により「歩道を歩く人」※が増えて来て、レーンごとの区分が必要になってきたのかも?

※歩道を歩く人って、つくば市内ではとっても目立ったんですよ。あの人なんで歩いているんだろう?って思わず考えてしまうくらいに。TXが開通してからは、駅周辺に限っては当たり前の光景になりましたけどね。そんなワケでかつては、歩道=自転車専用道みたいな感がありました。

今回のハイライト

そのまま北方向に向かって右側を走っていますと、「つくば植物園」の入り口が。ここは「国立科学博物館 筑波実験植物園」です。有料ですが誰でも見学できます。

 国立科学博物館 筑波実験植物園入り口

今回の主題の中でも一番のハイライトと思っているのがこの場所です。筑波実験植物園の入り口を通り過ぎますと、こんな光景(↓)が待ち受けています。

 筑波実験植物園付近

歩道の車道側にはこれまで同様の見事な(っても剪定されているからちょっと寂しいけど)街路樹が広がっています。でも、その右側をご覧ください。整然と植えられた街路樹を、「それがどうした?」を言わんばかりの濃い木々の緑。勿論その右側に広がっているのは実験植物園の木々です。

街路樹が剪定される前(昨年)は、まんま「森の中を走っている気分」でした。

そしてゴール

やがて右側にウナギ屋さんが見えれば今回のゴール地点です。車道レーンと歩行者レーンが分かれているのここまでですので。

この先は自転車・歩行者レーンに分かれていませんが、歩道を歩く人は珍しい土地柄ですので、別に自転車で走っても問題はないと思います。しかし、街路樹の根っこが歩道の舗装を押し上げて(ひび割れして)いる箇所が多くなるため、ママチャリを含めてサス無しの自転車は単に不快になるだけかと。

感想

今回は個人的に一番好きな紅葉の時季を走ってみましたが。でも、春には桜が、新緑の時季には街路樹の緑が、晩秋には紅葉が、冬には葉っぱのない寂しい街路樹が(って、いくらなんでもこれはないか。でも、個人的には一番好き)楽しめます。機会があれば東大通りの歩道を走ってみませんか?きっと他では体験できない貴重な光景が待ち受けている事かと思います。

 東大通りの桜並木


庶民チャリダー

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